第4話『昔もいまも、同じ空の下』

PART 9

吟子
あの……もうみんな、梢先輩から聞いたと思いますけど、
伝統の衣装のこと。
小鈴
あ、うん。 直せないって……。
瑠璃乃
せっかく花帆ちゃんたちが見つけてきてくれたのに、
残念だよね……。
吟子
それでね。
私からも、お願いがあって。
姫芽
えっ、なになに~?
吟子
この初代の伝統の衣装、もっとバラバラにしてもいいかな。
さやか
これ以上にですか!?
花帆
どういうこと!?
吟子
あ、えっと……。
あのね。
吟子
私、新しく9着の衣装を作りたいんです。
吟子
その新しい衣装に、この伝統の衣装の生地を使いたくて。
花帆
それって……。
吟子
この衣装には、きっとまだ想いが残っているんです。
吟子
私はそれを拾い上げて、そこに……
皆さんの気持ちも、私の気持ちも込めたい。
綴理
ボクたちの?
吟子
はい。
吟子
スリーズブーケの衣装は、かわいらしくて、美しく。
吟子
DOLLCHESTRAの衣装は、綴理先輩と小鈴が並んでも、見栄えがして……
3人のダンスが、ちゃんと麗しく見えるように。
吟子
みらくらぱーく!の衣装は、慈先輩らしく華やかに。
瑠璃乃先輩や姫芽にも、いちばん似合うように。
吟子
それができるのは、今この時代を生きてる私たちだけだから。
吟子
私なんか……って、気持ちはまだなくならないけど……でも!
吟子
スクールアイドルの私は『私なんか』じゃないから!
吟子
先輩たちを優勝させるために!
そして、金沢の伝統を世界に広めるために!
吟子
私のために、ラブライブ!を優勝するんだから!
吟子祖母
ふっふふふ。
吟子
これが私の答えです。
いいんじゃないかしら。 あなたらしくて。
花帆
うん、いい! いいと思うよ、吟子ちゃん!
吟子
う……近い……。
さやか
吟子さん、悩みが晴れてよかったですね。
綴理
きれいな青だね。
ぎんの色は、ボクたちを彩るアートだから。
綴理
一年生のときのこずとちょっと似ていて、
だけど、ちゃんとぎんだけの色だ。
似ていた? そうかしら。
吟子
というわけで……どうでしょうか、皆さん。
大変なのはわかっています。 でも、私にやらせてほしいんです。
吟子
私、衣装にちゃんと魂を込めます。
新しい蓮ノ空の伝統にしてもらえるぐらい。
……吟子ちゃんひとりで?
吟子
ひとりでは……ないと、思います。
あ、いえ、作業はひとりでやるつもりですけど……。
吟子
……皆さんの気持ちを、しっかりと、お預かりしますから。
いいよ、やんなさい。
吟子
ぁ…………えっ?
吟子
それ、慈先輩がひとりで決めて、いいんですか?
多数決とか、話し合いとか……。
顔見ればわかるんだよ。
文句言うヤツなんて、ひとりもいないって。
それにね、やりたいことってのは、言ったもん勝ちなの。
でしょ?
吟子&姫芽
慈先輩……!/めぐちゃんせんぱい~!
吟子
も、もちろん、出来が気に入らなかったら、
好きに直してもらって結構です!
吟子
なんなら、捨ててもらっても……。
瑠璃乃
出てる出てる! ネガティブ出てる!
吟子
うう……。
花帆
大丈夫だよ、吟子ちゃん。
みんながついてるから。
吟子
それでは……その……。
吟子
……皆さん、ありがとうございます!
私、精一杯がんばります!
それでは、お世話になりました。
吟子祖母
またいつでもいらっしゃい。
花帆
吟子ちゃん、ほんとにひとりで大丈夫?
吟子
うん。 やりたいんだ。 自分の力で。
花帆
わかった。
あたしたちもそれ以外の準備、がんばるから!
吟子祖母
梢さん。
はい。
吟子祖母
よかったわ。 スクールアイドルクラブにあなたがいてくれて。
少し見ん間にぃ、吟子も大人になったみたい。
そんな、私はなにも。
吟子祖母
あなたたちはただ自由に、今を駆け抜ければいい。
外野の声なんて、気にせんでいいんげんよ。
吟子祖母
ふっ……どうしてもあれこれと余計なことを言いたくなってしまう。
やっぱり、年のせいなんかねぇ。
百生先生、これを。
吟子祖母
これは……チケット?
はい。 今月度Fes×LIVEの、チケットです。
吟子さんの作ってくれた新衣装は、そこでお披露目しようと思っています。
彼女は、人の想いを力に変えて進むことのできる、強い子です。
先生だけじゃない。 この町の人や、かつてのスクールアイドル。
芸楽部の部員たち。
そして今も応援してくれている方々のために、歌います。
その決意を、どうか見届けてくれませんか?
吟子祖母
ふふ、ありがとう。
吟子祖母
とっても楽しみにしとるわ。
はい。
それじゃあみんな、帰りましよう!
蓮ノ空に戻ったら、準備に練習に、大忙しよ!
花帆&さやか&綴理&慈&瑠璃乃&小鈴&姫芽
おー!
吟子
……さてと。
吟子
決めたんだ。
私がみんなの想いを届けるって……。
吟子
……まずは、伝統の衣装の中から、使えそうな生地を集めて……。
吟子
……梢先輩や、慈先輩、綴理先輩にとって、今年が最後のチャンス。
ずっと、ずっとがんばってきて……最後の、ラブライブ!大会……。
吟子
……その衣装を、私なんかが作るなんて……。
吟子
……だめ、手が震えてる場合なんかじゃ、ないのに。
姫芽&小鈴
同じ空の下!
一緒だよ!
吟子
っ……ふたりとも……。
吟子
……梢先輩も言ってくれた。
吟子
『でもね、もう大丈夫。 今は、ひとりじゃないから。』
吟子
……うん、大丈夫。
みんな一緒だから。
吟子
私は、スクールアイドル。
芸楽部じゃなくて……今を生きる、スクールアイドルの百生 吟子。
吟子
大好きな人たちの想いを、ぜんぶ、守りたい。
それが、私の夢ーー。