第3話『ゆえに、みらくらぱーく!あり』

PART 2

瑠璃乃と姫芽ちゃんで、作戦会議の最中である。
先ほど、慈に聞いた話をそのまま姫芽に伝える瑠璃乃。特に最優秀賞を狙うつもりはない。
瑠璃乃と同じようなリアクションをして喜ぶ姫芽。
姫芽
へ~。 出し物ですか~。
めっちゃたのしそ~。
瑠璃乃
いや~、楽しそうは楽しそうで、その通りなんだけど~。
姫芽
? どうかしたんですか~?
瑠璃乃
ん、まあ、がんばんないとな~って……。
戻ってくるめぐちゃんのためにも……姫芽ちゃんのためにも。
急に振ってきた責任感を重荷に感じる瑠璃乃。(※あくまでも、プレッシャーに感じてる表情は、姫芽には見せないようにする)
瑠璃乃
でもでも、こーゆー責任感ってなんか久しぶりだから、
チョット緊張しちゃうってゆーか。
ズバッと手を挙げる姫芽。
姫芽
あ、だったら、ハイ。 るりちゃんせんぱい~!
みらくらぱーく!でぜひやりたいことがあります~。
瑠璃乃
では、はい! 言ってみたまえ、姫芽ちゃんくん!
姫芽
アタシ、ミニライブが見たいです~! 教室とかで~!
姫芽があまりにもちゃんとしたことを言うものだから、思わず感動してしまう瑠璃乃。
瑠璃乃
おお……。 いいじゃん、え、メッチャいい……。
姫芽
いつもよりみんなとスッゴク距離が近くなって~、
みらぱ!ガチ勢はもう、やばやばですよ~。
姫芽
それになんか、教室でのライブって、文化祭っぽくないですか~?
瑠璃乃
ぽいぽい! すごいよ、姫芽ちゃん!
1球目からホームラン出ちゃった。
かわいらしく照れる姫芽。
姫芽
えへへ~。
しかし、目端の利く瑠璃乃は、気づいてしまう。
瑠璃乃
あれ、でも。
瑠璃乃
姫芽ちゃんさっき、ミニライブが『見たい』って言ったよね?
ぎくりとする姫芽。
姫芽
……え。
瑠璃乃
だったら、姫芽ちゃんにはやりたいことが他にあるんじゃ?
瑠璃乃
例えば、んー。 あ、ゲーム大会とか。
笑顔を咲かせる瑠璃乃の言葉に、苦虫を噛みしめたような顔になる姫芽。
瑠璃乃
え!? その表情どういう感情!?
姫芽
そこを突かれてしまいましたか~……。
……やりますね、さすがるりちゃんせんぱい~……。
瑠璃乃
どゆこと?
焦りながら、姫芽は早口で弁解しようとする。
姫芽
ええと、すごく、その、複雑なんですが~!
でもアタシはみらぱ!推しなわけで~……。
姫芽
それなのに自分を優先させるというのも~!
瑠璃乃
なんかメッチャ遠慮してない!?
姫芽
そ、そんなことは~!
たじたじになって、目をそらす姫芽。
姫芽
ただ、みらぱ!もアタシにとっては、トクベツな存在というだけで……!
しかし、瑠璃乃がその顔を覗き込んでくる。
瑠璃乃
どうなの? 姫芽ちゃん。
ゲーム大会、やりたい? やりたくない?
姫芽
そんなの! ぜんぜんやりたく!
やりた……やりたくな…………。
拳を握りしめながら答えを絞り出す姫芽。
姫芽
う……うぅ~……。 やりたい、です、ゲーム大会……。
瑠璃乃は姫芽の本音を引き出すことができて、ほっと一安心。
瑠璃乃
うんうん、だよね、そーだよね。
姫芽
ずるいですよ、るりちゃんせんぱい~……。
いくら相手がせんぱいでもアタシ、ゲームにだけはウソつけないんです……。
にこやかに自分を肯定してくれる瑠璃乃。
瑠璃乃
姫芽ちゃんは本当にゲームが大好きなんだねえ。
姫芽は胸に手を当てて語る。
姫芽
お姉ちゃんの影響なんですよね~……。
瑠璃乃
もしかしてお姉さんも、超スゴイゲーマーだったり?
姫芽
いやいやぜんぜん~!
むしろゲームはほとんどやらない人です~。
姫芽
ゲーム機……っていうか、
ゲーミングPCを買ってくれたのが、お姉ちゃんだったんですよ~。
瑠璃乃
えー、すっごーい!
姫芽
えへへ~。 『流行ってるから』って、FPSゲームを入れてくれて。
だから、ず~~っとおんなじゲームで遊んでました、アタシ。
姫芽
そして気づけば、仲間も増え、友達も増え……です~。
瑠璃乃
お~……。
よっぽど嬉しかったんだね、幼き姫芽ちゃん。
姫芽
はい、そりゃもう~! 人生変わりましたから~!
姫芽
ハッ、でもアタシが今スクールアイドルをしているのは、
みらぱ!の影響……っていうか、おかげですからね~!?
姫芽
だから、みらぱ!のミニライブを見たいっていう気持ちも、
本当に本当なんです~!
姫芽
信じてください~!
瑠璃乃
そこは最初から疑ってないけどね!?
みらぱ好きの自分とゲーム好きの自分が衝突して、どうすればいいかわからず頭を抱える姫芽。
姫芽
あ、アタシはいったいどうすれば~~……。
本気で苦悩する姫芽を見て、瑠璃乃が覚悟を決める。
瑠璃乃
そっか……そっか~。
うん、じゃあやっぱり、絶対に撫子祭の出し物、成功させなきゃだ。
瑠璃乃
姫芽ちゃん!
ルリもがんばることを決めたよ! 今、決めました!
姫芽
そ、そうなんですか~!?
るりちゃんせんぱいは、いつでもがんばってるかと!
瑠璃乃
だったらいつもの2倍……いや、めぐちゃんの分までだから、5倍!
姫芽
そんなチートが!?
瑠璃乃
なんたって、初めての撫子祭は今しかないんだから!
瑠璃乃、言い切る。
瑠璃乃が笑顔で姫芽に手を伸ばす。
瑠璃乃
やりたいことは、ぜんぶやろっ!
姫芽
ええええ~っ!?
慈のもとへと向かった瑠璃乃と姫芽。
瑠璃乃の言葉に、慈も同調する。
瑠璃乃
というわけで、今回のみらくらぱーく!は、
思いついた出し物はぜんぶやることにしました!
うりうりと瑠璃乃の頭を撫でるとか、肘で小突くとかして、はやし立てているイメージです。
ええ~!?
いいじゃん、私も大賛成! この欲張りさんめ~!
瑠璃乃
ほらほら! ね?
姫芽
なっ。
姫芽
ほ、ほんとうにいいんですか~……!?
慈はにっこり。
今年の撫子祭は一生に一度しかないんだからさ、
ガマンなんかしなくていいんだよ☆
楽しいことは、ぜんぶやっちゃお!
それが私たち、みらくらぱーく!なんだから!
瑠璃乃を見やる姫芽。瑠璃乃も同じことを言っていた。
姫芽
あっ……。
瑠璃乃はにっこり笑う。
瑠璃乃
ね?
感動する姫芽と、気合を入れ直す慈。
姫芽
ううぅ~~~……ありがとうございます、ありがとうございます~!
アタシ、みらぱ!に入って、よかったです~!
よっしゃ! そうと決まったら、うかうかしてらんないね!
スリーズブーケとDOLLCHESTRAに負けないように、
大急ぎで準備を始めなくっちゃ!
姫芽
はい!
瑠璃乃が慈の背を押して、教室に押し戻す。
瑠璃乃
じゃあそういうわけで。 めぐちゃんはがんばって。
なんで!?
『やりたいことはぜんぶやる』んじゃなかったの!?
やだやだイジワルしないで!
私もみらくらぱーく!なんだからー!
姫芽
いいんですか……?
瑠璃乃
いーのいーの。
瑠璃乃
てか、ここで無茶してフェスティバル当日に
めぐちゃんが出られないほうがヤバじゃん?
姫芽
そ、それは確かに~!