第11話『スクールアイドルクラブのために!(?)』
PART 8
瑠璃乃 | だめだぁ! お客さん、ぜんぜん減らない~! |
綴理 | さすがに、ライブまで時間ないね。 |
さやか | 梢先輩は? |
花帆 | 抜け出せなかったよ~……。 あたしだけ……。 |
瑠璃乃 | どうしよ、めぐちゃん……。 |
さやか | 手順の複雑な料理をシンプルなものに変更して、 厨房の人数を他の部署に回せるようにしようか、 という案も出ていましたが……。 |
花帆 | えーやだー! いちばんおいしい料理食べてほしいよー! |
慈 | …………。 |
慈 | ごめん、みんな。 戻ってきてくれてありがとう。 がんばってみたけど、時間切れみたいだよ。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん……? |
慈 | みんなはライブに向かって。 ここには、私が残るから。 |
花帆 | 慈センパイ……! |
慈 | 私は、もともとそのつもりだったしね。 |
慈 | この状況を作ったのは私の責任。 だったらどうするべきかは、決まってるでしょ。 |
慈 | 全員が丸く収まるには、もう、それしかないよ。 |
慈 | これ以上、みんなにも、旅館の人にも、 ライブに来てくれる人にも迷惑をかけられないよ。 |
慈 | だって、今までもさんざん……。 |
慈 | 私がなんとかする。 だからみんなは、みんなのやるべきことをーー。 |
瑠璃乃 | それは、なんか違う。 |
慈 | 違う、って……。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんがひとりで旅館に残ったときから、 なーんかへんだなー、やだなーって思ってたんだよね。 |
瑠璃乃 | でも、ようやくわかった。 |
瑠璃乃 | うん、めぐちゃんぽくない! |
慈 | ……そ、そんなこと言われても! 私が藤島 慈だよ! |
瑠璃乃 | めぐちゃんだったら、誰かのためでも、 自分の楽しみを曲げたりしないんだよ! |
慈 | は、はあ!? そんなやつは、さすがにワガママすぎじゃ……! |
慈 | だって、他に方法がないんだったら……。 |
慈 | 誰かがやらなきゃいけないんだったら、私がやるべきでしょ! だって、私はなんだってできるんだから! |
さやか | ……だからって、いくら慈先輩でも、ひとりでは無理ですよ。 実際、かなり厳しそうにしていましたよね。 |
慈 | それは……。 |
綴理 | そうじゃなくても、誰にも誰かの代わりなんて無理。 さやはさやだし、めぐもめぐ。 |
慈 | でも、だけど、私のせいで……! |
瑠璃乃 | だから! ね、ちゃんとみんな全員でほんとに納得できる道を探そ? |
瑠璃乃 | めぐちゃんなら思いつくでしょ? ほら、それがめぐちゃんの役目だよ! |
慈 | 私の……。 |
さやか | 厨房はもう少しで夕食の準備が終わるので、 それさえ済めば手が空くはずです。 |
花帆 | そういえばさっき女将さんが言ってたけど、 もうちょっとで他の旅館からもお手伝いの人が来てくれるって。 |
瑠璃乃 | フロントのお仕事はピークすぎちゃえば、 あとは今いる人で回るはず! |
綴理 | どうする? めぐ。 |
慈 | ……確かに、ちょっとヘンだったかもね。 |
慈 | るりちゃんの言う通り。 私がなんとかしなきゃって思ってた。 |
慈 | 今までさんざん梢と綴理に役目を押しつけてきて、 だから挽回しなきゃって意固地になってた。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん……。 |
慈 | でも、そうだよね。 私らしくなかったと思う。 |
慈 | 私がやるなら、もっとちゃんと、みんなが楽しい道を選ぶよ。 だからーー。 |
慈 | 私がライブ会場に向かうよ。 |
慈 | みんなが来るまで、私が場をもたせる。 |
花帆 | ええっ!? 慈センパイひとりでですか!? |
さやか | そんな、わたしたちがいつ合流できるかも、わからないのに……! 無茶ですよ! |
慈 | そうだね。 ーー他の誰かだったらね。 |
慈 | いつも配信でやってることを、ステージでやってくるだけでしょ。 ちゃんと会場のみんなを、楽しませてみせるから。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん! |
慈 | 私がなんとかしてみせる! それって、こういうことでしょ! |
綴理 | うん、ビビっときた。 たぶんそっちが、正解だ。 |
慈 | 偉そうに! |
さやか | 慈先輩の配信、いつもハツラツとしてて、 明るくて、眩しくて……。 |
さやか | 見ているととても、元気になれる気がして。 だから、先輩ならきっと大丈夫です! |
花帆 | すぐにあたしたちも追いつきますから! |
慈 | 任せなさい! |
慈 | きょう会場に来てくれた人全員、 めぐちゃんのこと大好きにさせてみせるから! |
慈 | いってくるね! |
梢 | みんな! |
花帆 | あっ、梢センパイ! さっき、慈センパイがーー。 |
梢 | そう、慈が。 慈なら心配いらないわね。 |
綴理 | うん、安心。 |
梢 | それじゃあみんな! もうひと頑張り! 残りのお仕事を全力で片づけるわよ! |
綴理&花帆&さやか&瑠璃乃 | おー! |
慈 | ……っ。 |
慈 | ハロめぐー! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの、藤島 慈だよー☆ |
慈 | ごめんなさい、ちょっとしたトラブルで、 他のメンバーはまだ会場に到着していなくて。 |
慈 | それまで、みんなで私のことを独り占めにしていてね☆ |
慈 | でもでも、きょうはせっかくのステージなんだから、 いつもと違うことをしたいよねー。 |
慈 | というわけでーー。 |
慈 | はい、前列2番目にいる、緑のスカートのキミ! 日頃からめぐちゃんに聞きたいことがありそうな顔をしているね! |
慈 | えーとなになに、めぐちゃんはどうしてそんなにかわいいのか、って? え、言ってない? いいの! お答えします! |
慈 | ええー、それはね、 毎日メチャクチャ美容に気を遣ったりして努力を重ねて…… るんじゃなくて☆ |
慈 | 私は最初からカワイイから、カワイイんだよ☆ |
慈 | はい次! 後ろの、すっごい後ろの、そう、赤のペンラもってるキミ! 赤ってことは綴理推しかー? |
慈 | わかるよ、いいよね綴理。 |
慈 | 『え? ボクの美しさは罪、ってこと……?』 |
慈 | 言わないか! まあいいや! |
慈 | 聞きたいことはー。 めぐちゃんってそんなにかわいいのに、 かっこいいところもあるとか、無敵じゃないですか!? だってー!? |
慈 | そうなんだよ……。 実はここだけの話、私って無敵だったのかもしんない☆ |
慈 | さて、他に質問はー……。 って、わあ、みんな手を挙げてくれるじゃん☆ |
慈 | じゃあほんとに質問してもらおっかな。 ほんとにってなんだ! |
(慈) | ーー掴みはOKだったけど、さすがに……。 何十分も引き延ばすのは、しんどいなあ……。 |
慈 | そうそう、一度行ってみたいところと言えば、 やっぱり私はーー。 |
(慈) | 今はまだ、みんなも付き合ってくれてるけど……。 でも、いつ帰ってもおかしくない感じだし……。 |
慈 | 好きな動物だったら、断然イヌでしょ! 私ね、実はおっきなシェパードを飼っててーー。 |
(慈) | 私がやるってみんなに言ったのに……。 こうなったらもう、頭を下げてでも引き留めてーー。 |
慈 | ……。 |
(慈) | ーーいいや。 |
慈 | あのね、みんな。 実は、朝にあげた動画なんだけど……。 |
慈 | あれがめちゃめちゃバズっちゃって。 温泉旅館に予約が殺到しちゃってね。 |
慈 | 今、メンバーのみんなが手伝ってるんだ。 |
(慈) | そんなの、私らしくない。 みんなみたいに、私は私のやり方でーー。 |
慈 | ほんとは、私が残るって言ったんだけど。 でも、みんなが私のことを、このステージに送り出してくれたの。 |
慈 | ……私ね、怪我のせいで、 1年間もスクールアイドルとして活動ができなかったでしょ? |
慈 | だから、焦ってたんだと思う。 私ならもっともっとなんでもできるのに、って。 |
慈 | なんでも全力で走り続けるのが、私のいいところ! |
慈 | でも、たまに周りが見えなくなって、 やりすぎちゃうのは悪いところだよね。 |
慈 | 今回は、それをみんなに教えてもらったな。 そう、つまりーー。 |
(慈) | ーー楽しくやらなくっちゃ! |
慈 | めぐちゃんは等身大のまんまで、 じゅうぶんかわいくて、かっこいいんだ、ってこと! |
瑠璃乃 | めぐちゃ~~~ん! |
慈 | と・ゆーことで! |
慈 | お待たせして、ほんっとにごめんね! ここからは、スクールアイドルクラブのステージが、始まるよ! |
慈 | みんなのこと、もーっと夢中にさせちゃうからね☆ |