第10話『ルリめぐ・ファンファーレ』
PART 8
瑠璃乃 | ……めぐちゃん。 |
瑠璃乃 | ルリ、今まで、本当になんにもめぐちゃんのこと、知らなかったんだ……。 それなのに、親友みたいな顔をして……。 |
瑠璃乃 | ほんとに、ぜんぶ遅かったのかな……。 もう……だめなのかな……。 |
梢 | まったく、なんなの急に……。 |
綴理 | ね。 |
瑠璃乃 | 梢先輩、綴理先輩。 |
梢 | あら、瑠璃乃さん。 いえね、さっき慈が来て、 急に『私物を処分してくれ』だなんて言ってきたの。 |
梢 | おかげで、大倉庫まで行くはめになっちゃったわ。 |
瑠璃乃 | それって……。 めぐちゃん、もう、 スクールアイドルクラブに戻ることはない、ってこと……? |
梢 | かも、しれないわ。 |
瑠璃乃 | ルリのせいだ……。 ルリが、めぐちゃんを、追い詰めたから……。 |
梢 | ……。 なにか、あったみたいね。 |
瑠璃乃 | あれ……? |
瑠璃乃 | あの靴! |
梢&綴理 | え? |
瑠璃乃 | 気づかなかった……。 |
瑠璃乃 | ルリが、めぐちゃんにプレゼントした靴だ。 サイズ違いだけど、同じもの……。 |
瑠璃乃 | こんなに、ボロボロにして……。 いっぱい、練習してたんだ。 |
瑠璃乃 | 知らなかった……。 |
梢 | 慈は、誰よりも努力する女の子だったわ。 |
綴理 | そういえば、聞いたことあるよ。 めぐに、どうして靴を取っておくの? って。 |
梢 | ……そうしたら? |
綴理 | 私さーー。 |
慈 | 私さ、この箱を見るたびに思うんだ。 ずいぶん遠くまで走ってきたなー、って。 |
慈 | で、もしも、こんなところまで追いかけてきてくれる子がいたらーー。 |
慈 | ーーそんなのもう、 世界中を夢中にさせるような無敵のユニット組んじゃうしか、 ないでしょ? |
瑠璃乃 | ルリ、ちょっと行ってきます! |
綴理 | え? どこにーー。 |
綴理 | 行っちゃった。 |
梢 | ……あなた、またよく覚えていたこと。 |
綴理 | ずっと……ずっと、楽しかったんだ。 |
綴理 | 覚えているさ。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん! めぐちゃん! |
慈 | えっ、る、るりちゃん……? な、なに? |
瑠璃乃 | あのね、わかったんだ! めぐちゃんのこと! 自分のこと! |
慈 | な、なに、なんなの……? |
瑠璃乃 | ルリは、めぐちゃんがなんでもできてかっこいいから、 好きになったんじゃないの。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんが、めぐちゃんだから好きなんだよ! ちゃんと、ちゃんと知ってたんだよ! |
慈 | ちょ、ちょっと、周りの迷惑になるから…… ああもう、中に入って! |
瑠璃乃 | あ、その靴……ここにも……。 |
慈 | これは……! た、たまにランニングしてるだけで! 気晴らしとか、息抜きとかそういうのだから! |
慈 | 靴だって、履きなれたものを、買い続けているだけで……。 |
瑠璃乃 | ……ね、めぐちゃん。 ずっと、ずっとがんばってたのに、 気づいてあげられなくて、ごめんね。 |
慈 | そ、それは……。 だって、私が黙ってたのが悪いわけで。 |
瑠璃乃 | いつだってルリの進む道を、照らしてくれてたんだ。 なのに、つらい思いをさせて、ごめん。 |
慈 | ……るりちゃん。 |
瑠璃乃 | 今まで、ありがとう。 でもね、もういいんだ! |
慈 | え……? |
瑠璃乃 | これからは、ルリがめぐちゃんの手を引いてあげるから! |
瑠璃乃 | ルリ、昔よりもずっと強くなったんだよ! 誰も知らない場所で、 カリフォルニアで、たったひとりで2年も過ごしたんだよ! |
瑠璃乃 | 約束通り、ビッグになって帰ってきたんだから! |
瑠璃乃 | めぐちゃんから見たら、まだ頼りないかもしれないけど! でもね、大丈夫! |
瑠璃乃 | ちゃーんと、強くなったんだって、証明してみせるから! めぐちゃんの知らないルリのこと、見せてあげるから! |
瑠璃乃 | やろうよ! 一緒に! スクールアイドル! |
瑠璃乃 | 昔は昔! 過去は過去! |
瑠璃乃 | これからは、ルリがめぐちゃんを引っ張ってって、 めぐちゃんもルリを引っ張っていく、そんな新しいめぐルリ! |
瑠璃乃 | またここから、始めようよ! |
瑠璃乃 | めぐちゃん、待ってるからねーー! |
慈 | るりちゃん……。 私は、私は……。 |
慈 | るりちゃん……。 |
慈 | 私だって。 |
慈 | 私だって! |
慈 | 何度つまづいたって、転んだって! やっぱり、諦めるのなんて、ムリ! |
慈 | だってーー。 るりちゃんが、待っているんだから! |
瑠璃乃 | あ……。 |
瑠璃乃 | あ、あはは……。 ひとりのライブ、けっこー大変で……。 |
瑠璃乃 | あんなにかっこつけたのに、ちょっと、情けないよね。 |
慈 | そんなことない。 かっこいいよ、るりちゃん。 すっごく、かっこよかった。 |
瑠璃乃 | あはは、嬉しい……。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん、来てくれてありがとう! |
慈 | ううん。 来てくれたのは、るりちゃんだよ。 |
瑠璃乃 | や、やめてよ、ステージの上なのに。 泣いちゃうかもじゃん! |
慈 | ふふふっ。 |
瑠璃乃 | それじゃあ、めぐちゃん! やろう、一緒に! |
慈 | うん、るりちゃん! ふたりで、世界中を夢中にさせよっ! |
慈 | 改めて! みんな、きょうは盛り上がっていこうね! いつもの、やっちゃうよー☆ |
慈 | みんなー、ハロめぐー! |
大勢 | ハロめぐー! |
瑠璃乃 | そしてそしてー! ルリたちは、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのユニット! |
慈 | 私たちの名前は! |
瑠璃乃 | せーのっ! |
慈&瑠璃乃 | みらくらぱーく! |
瑠璃乃 | はぁー……もーへとへとぉ……。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃん! やったね! |
瑠璃乃 | ぐぇっ。 |
さやか | ライブ、大成功ですね! |
花帆 | 舞台袖からずーっとエネルギー送ってたかいがあったね! |
瑠璃乃 | た、たんまっ、今バッテリーないから! 密着されると! しんど、しんどい! |
梢 | 復帰おめでとう、慈。 |
慈 | ん……。 今までいっぱい心配かけちゃったね。 ごめん、梢、綴理。 |
慈 | それから……。 ーーただいま。 |
梢 | ……べ、別に、待ってなんていなかったわ。 |
梢 | あなたの私物、部室に置きっぱなしだから、 今度は自分で大倉庫に戻してちょうだいね。 |
綴理 | おかえり、めぐ。 |
慈 | …………。 う、うん……。 あはは、やっぱりこういうのは、恥ずかしいなー……。 |
花帆 | あーっ、慈センパイ照れてるぅー。 |
さやか | 案外かわいいところもあるんですね。 |
慈 | だ、だから! 私は上級生なんだから、敬いなさいってば! まったくもー! |
瑠璃乃 | めぐちゃん! ぐっじょぶ! きょうはほんとにほんとに、よくがんばりました! |
慈 | ん、んー……! んっ……。 |
慈 | うん……。 あのね、るりちゃん。 |
慈 | ……ずっと意地張ってて、ごめんね。 |
慈 | ほんとは、るりちゃんが来てくれて…… すっごく、すっごく、嬉しかったんだよ。 |
慈 | 心から、ありがとうーー。 |
瑠璃乃 | め、めぐちゃん。 ああわわっ! |
慈 | だから! 次は、最初からステージに立とうね! ふたりで、一緒にーー! |
瑠璃乃 | ーーうんっ! |