第10話『ルリめぐ・ファンファーレ』
PART 3
全員で海水浴場に到着。それぞれキャリーケースやトランクなどを持って、まずは梢の別荘に。 | |
両手を突き上げて叫ぶ花帆。別荘の前に海が広がっているというロケーション。 | |
花帆 | 晴れ渡る青空! 透き通る海! うーみー! |
さやか | すみません、梢先輩。 宿泊場所を提供していただいて。 |
梢 | いいのよ。 使うための別荘だもの。 |
瑠璃乃 | 梢先輩、お金持ちだったんだ。 どーりでなんか、雰囲気がピカピカしてますなー……! |
花帆 | ふふっ、梢センパイのすごさは、こんなもんじゃないんだよ。 |
瑠璃乃 | この上さらに!? |
花帆 | こんな感じの別荘がたぶんあと300個ぐらいあるんだから! |
瑠璃乃 | すっげー!! |
梢 | ないわ。 |
綴理 | でも、さやもすごいよ。 煮物をおいしく作れる。 |
さやか | そのレベルでわたしを同じ土俵にあげるのやめてもらえませんか!? さ、荷物を中に運びますよ! 皆さん! |
花帆&綴理&瑠璃乃 | はーい。 |
場面転換、別荘の内装を見せる。 | |
瑠璃乃 | わー! すっごー! |
綴理 | ベッド、おおきい。 |
さやか | キッチンも広々として、使いやすそう……! |
全員、一通り驚いた後。リビングのいる梢の下に、花帆と瑠璃乃が戻ってくる。 | |
花帆 | りゅ、竜宮城……! |
瑠璃乃 | 別荘って、えくせれんとですなー! |
梢に、花帆が胸に手を当てながらしみじみと告げる。 | |
花帆 | 梢センパイ、あたしきょうからここに住みます。 この別荘ならきっと、花咲けるはず……! |
梢 | 潮風がすごいと思うけれど……。 |
梢 | ここはもともとね、母が作曲のために使っていた別荘なの。 だから防音設備はちゃんとしているはずよ。 |
梢 | 夜遅くまで、しっかり練習ができるわ。 |
花帆 | えっ……。 夜遅くまで、れんしゅ……。 う、海は……? |
梢 | そんなに怯えなくても、もちろん行くから安心して。 |
花帆 | やったぁー! 梢センパイ大好き! |
花帆に抱きつかれて、虚無の顔でつぶやく梢。 | |
梢 | なんて安い『大好き』なのかしら……。 |
梢 | それで、綴理とさやかさんは? |
瑠璃乃 | えっとぉ。 |
瑠璃乃 | 綴理先輩は、広いベッドで幸せそうに寝てました。 |
瑠璃乃 | さやかちゃんは、キッチンの前で感動したまま動かなくなって。 |
梢 | ……。 |
瑠璃乃 | あ、花帆ちゃんは今、水着に着替えて飛び出していきました。 |
花帆の台詞は、海に飛び出していった後に、遠くから聞こえてくるようなエフェクト。 | |
花帆 | よーし、海だー! 遊ぶぞー! |
梢、頭痛をこらえるように頭を押さえる。 | |
梢 | ……そう。 |
きらきらの目の瑠璃乃に、ヤケクソ気味にうなずく梢。 | |
瑠璃乃 | 好き勝手にやってバラバラなのに、 同じ方向を向いて、みんなで楽しいことができる……。 |
瑠璃乃 | つまりこれが、蓮ノ空スクールアイドルクラブってことでっすね! |
梢 | ……そう、ね! |
梢 | はぁ、いいわ。 今から練習という雰囲気でもないし。 先に、遊びに行きましょう。 |
梢 | 綴理とさやかさんも呼んで、みんなで海に、ね。 |
瑠璃乃 | はーいっ! |
海に出てきたスクールアイドルクラブ一同。周りには人がいない、貸し切り状態。 | |
海で遊ぶシーンは点描で。 | |
梢がぱちぱちと手を打って、みんなを集める。 | |
梢 | さ、遊ぶのはそこまで。 そろそろ練習を始めましょう。 |
たったか戻ってくる一年生三人。それぞれ満足気。 | |
花帆&さやか&瑠璃乃 | はーい! |
さやか | きょうはどうするんですか? |
さやか | ライブの成功を目指すということは、 二年生のお二方は瑠璃乃さんを重点的に特訓する、とか? |
チラと視線を動かす梢。海水浴場を覗く堤防かなにかの影に、こちらを盗み見ている影。慈である。 | |
梢 | そのことなのだけれど。 |
瑠璃乃 | あーっ! めぐちゃん! |
しまった、見つかったという顔で逃げ出そうとする慈を、ビシリと瑠璃乃が指さす。 | |
慈 | はっ。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃん、さやかちゃん! とぅーきゃーっち! |
花帆 | りょーかいっ! |
さやか | 逃がしませんよっ! |
慈、瑠璃乃たちの前に引きずり出される。 | |
慈 | う、うわー! なんなのキミたちー! |
横を向いて、決して目を合わせようとしない。 | |
慈 | ……まったく、私は上級生なんだぞー。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん、どうしてこんなところにいるの!? |
瑠璃乃を見て、動揺する慈。 | |
慈 | え? そ、それはー。 せっかくの休みだし、 海見に行こっかなーって思ったら、たまたま……みたいな? |
瑠璃乃 | えっ、偶然……!? |
花帆 | なわけないよ! 嘘だよ、嘘! |
瑠璃乃 | あっ、そっか。 そーだよね。 めぐちゃんの言うことだから、ついつい信じちゃった……。 |
さやか | 瑠璃乃さんを騙して心が痛まないんですか、慈先輩。 |
慈 | 梢! なんかこの一年生ふたり、私に当たり強くない!? |
梢 | 仕方ないと思うわ。 |
梢 | というわけでね、慈は私と綴理が呼んだの。 瑠璃乃さんの練習を見てもらおうと思って。 |
さやかと花帆と慈は悲鳴、瑠璃乃は歓喜。 | |
花帆&さやか&慈&瑠璃乃 | えー!? |
慈 | ちょ、ちょっと梢! 私そんなの聞いてないよ! |
すっとぼける梢。二年生はすでに共謀済み。わかっててニコニコする綴理。 | |
梢 | そうだったかしら。 |
綴理 | こずもたまにうっかりなところがあるからね。 |
花帆 | 慈センパイ、やってくれるんですか!? あんなに優しくなかったのに! |
本人はまったく責めている気はない花帆の素直な感想に、胸を押さえる慈。 | |
慈 | ぐっ。 |
梢 | でも仕方ないのよね、花帆さん。 私はスリーズブーケで、綴理はDOLLCHESTRAがあるでしょう。 |
梢 | どうしても手が足りなくて。 |
綴理 | それは仕方ないね。 ほんとに仕方ない。 |
わざとらしく芝居がかった二年生の会話。慈が歯噛みする。 | |
慈 | ぐぬぬ、おまえらだましたなー……。 |
梢 | どうかしら、慈。 |
すがるような目で見られて、慈はうっとなる。 | |
瑠璃乃 | めぐちゃん…… ルリにスクールアイドルのこと、教えてくれるの……? |
慈 | ……私、もうほとんど練習なんてしてないんだけど。 |
梢 | でも、スクールアイドルのことは、ずっと見てきたんでしょう。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん。 |
表情がぱあっと明るくなる瑠璃乃。 | |
慈 | …………わ、かったよ! どうなっても、知らないんだよ! |
慈に抱きつく瑠璃乃。慈はされるがまま。 | |
瑠璃乃 | わーい! めぐちゃん、大好き! |
花帆はまた慈が瑠璃乃を傷つける言葉を吐くのではないかと思って、複雑そうにうなる。 | |
花帆 | むむむ……。 |
さやか | ……仕方ありませんね。 誰より、瑠璃乃さんが嬉しそうなんですから。 |
花帆 | …………もう! 梢センパイ、早く練習しましょう! |
梢 | あら、珍しい。 |
綴理 | ボクたちもいこっか、さや。 |
さやか | はい! |
残された慈と瑠璃乃。慈はそっぽを向いて、瑠璃乃はニコニコと慈を見ている。 | |
瑠璃乃 | それじゃあめぐちゃん、よろしくね! |
慈 | 先に言っておくけど! |
瑠璃乃 | え……? な、なに? |
慈は何度も言葉を切り出そうとしてためらってから、絞り出すように告げる。 | |
慈 | ……こないだは、あんな言い方して、ごめん。 それと、蓮ノ空入学、おめでと。 |
瑠璃乃 | うんっ! |