第5話『顔を上げて』
PART 4
さやか | ありがとうございました!また来てくださいねー! |
さやか | ふふっ。なんだか楽しくなってきたなぁ……。 |
花帆 | ーーやっほー!! |
さやか | いらっしゃいませー!! |
さやか | ……って、花帆さん!? |
花帆 | わー!さやかちゃん、なんかすごくお店の人っぽいね! |
さやか | お店の人っぽいってなんですか。 花帆さんは、お買い物ですか?珍しいですね。 |
花帆 | 珍しいかな?あたしお買い物好きだよ! ねぇねぇ、さやかちゃんおすすめのお店とかあるかなぁ? |
さやか | そうですね。あっちには美味しいお弁当屋さんもありますし、 向こうの角曲がると素敵な雰囲気の喫茶店がありますよ。 |
花帆 | ほえー。 |
さやか | 花帆さん? |
花帆 | この辺りのお店のこと、よく知ってるんだねぇ。 |
さやか | いえ、この二日で知ったお話ですよ。 実はわたしも、今まであまり来たことが無かったので。 |
さやか | 色んなお客様と、お世話になったお店の方々が教えてくれたんです。 |
花帆 | たった二日で……!?さやかちゃん、店員の才能あるんだね! あ、そうだ! |
花帆 | じゃあ、撮るね! |
さやか | 撮るって、え!?動画ですか!? |
花帆 | 安心して、配信だよ! |
さやか | 何に安心しろと!? |
花帆 | はい!みなさんこんにちは! 蓮ノ空スクールアイドルクラブの日野下花帆です! |
花帆 | 今日はなんと!近江町市場に来ています! そしてー? |
さやか | え、えーっと!!お、同じく村野さやかです…… か、花帆さん、何をどうすれば! |
花帆 | いつも通りのさやかちゃんで大丈夫だよ! |
花帆 | 実はですね、今さやかちゃんが近江町市場でお手伝いをしているんです! |
花帆 | 頑張ってるさやかちゃんがすっごく眩しくて、 花帆はつい配信を始めてしまいました! |
さやか | ……眩、しくて。 |
花帆 | さやかちゃん! |
さやか | は、はい! |
花帆 | さやかちゃんは、どうしてお店のお手伝いをしているんですか? お金に困っているなら言ってくれればよかったのに……! |
さやか | ち、違いますよ!これはその、夕霧先輩がーー。 |
れいかさん | さやかちゃーん!お会計やってあげてー! |
さやか | あ、はい! |
さやか | こちらお会計ですね、合わせて540円です。 ……あ、そうなんです、お手伝いなんです。 |
さやか | はい、蓮ノ空のスクールアイドルクラブで! あ……応援、ありがとうございます!お気をつけて! |
さやか | ご、ごめんなさい花帆さん! えっと、なんでしたっけ。 |
花帆 | ……ううん!さやかちゃんの周り、すっごく綺麗に花咲いてるみたいだね! お買い物に来た人、みんな笑ってていいね! |
さやか | それは……そうですね。皆さんのおかげで、 本当に楽しくお手伝いさせていただいています。本当に、良いところです。 |
花帆 | ふへへっ。 |
花帆 | そんなわけで!地元を笑顔にしてくれる、 お店のさやかちゃんをリポートさせていただきました! |
花帆 | 花帆でしたー!またねー! |
さやか | えっと……結局なんの配信だったのでしょう……。 |
花帆 | ほんとは、頑張ってるさやかちゃんに インタビューしようと思ったんだけどね。 |
花帆 | というか、あの真面目なさやかちゃんがお店のお手伝いしてるっていうから、 すごく頑張って、頑張って、頑張りすぎてるんじゃないかって思って飛んできたんだけど! |
花帆 | でも、さやかちゃんのお話を聞いて、それから 今のお客さんとのお話を見てたら、そういうのが全部吹き飛んじゃって。 |
花帆 | 代わりに、あたしも何かやるぞー! って気持ちが弾けそうになってきた! |
さやか | 花帆さん……? |
花帆 | 凄いね、さやかちゃん!さっきもね、さやかちゃんに会いに お店に行ったって人にも会ったんだ!一人だけじゃなくて、何人も! |
さやか | えっ? |
花帆 | あたしもさやかちゃんみたいに、みんなを笑顔にしたい! あたしも頑張る!もちろん、さやかちゃんのことも応援してるからねー! |
花帆 | やるぞー!! |
さやか | が、頑張ってくださーい……。 |
さやか | わたしが、ここの皆さんを笑顔に、か。 |
さやか | 出来てる、かな……? |
さやか | ま、毎日違うところでアルバイトされてるんですね、れいかさん……。 |
れいかさん | ふふふ、気合よ気合! 言ったでしょう、このあたりでバイトしてるって! |
さやか | 本来そういう意味の言葉じゃないと思うんですけど……。 |
れいかさん | それで、どうかしら。まさか三日連続で来てくれるとは思わなかったけれど……もう慣れた? |
さやか | どう、なんでしょう……自分ではあまり実感がなくて……。 |
れいかさん | ふふ、ごめんなさい。よし、じゃあ今日も頑張りましょう!! 頼りにしているわ、さやかちゃん! |
さやか | は、はあ。 |
れいかさん | 本当に頼りにしているわ!!私のフォローを! |
さやか | ちょっと!? |
れいかさん | 冗談冗談。それにしても、 あの綴理ちゃんの後輩がさやかちゃんみたいな子だとはねえ。 |
さやか | あの。初めて来た時の夕霧先輩は、どんな感じでしたか? |
れいかさん | なぁに、気になるの? |
さやか | それはその……はい。正直気になります。 楽しくお手伝いさせて貰っていて、そこに不満はないんです。 |
さやか | でも、そもそもどうして夕霧先輩がここに連れてきてくれたのかは、 まだ……。 |
れいかさん | そう……。 |
れいかさん | 綴理ちゃんもさやかちゃんと同じで、 先輩に連れてきて貰ってたわ。 |
れいかさん | それでさやかちゃんと同じように、きょろきょろこの街を見てたの。 でも、そうねえ。ふふっ。 |
れいかさん | さやかちゃんと違って、色々大変だったわぁ。 どう大変だったのかは、さやかちゃんに話した通りね。 |
さやか | あー、あはは……。 ……でも、夕霧先輩も、その上の先輩に連れてきて貰っていたんですね。 |
れいかさん | 私には、綴理ちゃんがさやかちゃんを連れてきた理由は分からないわ。 だけど、さやかちゃんがここに来る意味があるんだって、強く言ってたから。 |
さやか | 夕霧先輩がそんなことを……。 |
綴理 | やあみんな。うん、そう。今日も来てる。 さやはおでん作ってるよ。さやのおでんも美味しいよ。 |
綴理 | ボク?ボクは立ってるよ。 ふふっ。ああ、立ってることはできるんだ。 |
れいかさん | そうは見えないかしら? |
さやか | いえ。夕霧先輩は言ってくれたんです。 わたしのために出来ることを、なんでもしてくれると…… |
さやか | そんな、もったいないことを。 だからこそ、本当はすぐにでも応えたい。 |
れいかさん | 私に言えるのは、このくらいかしらね。 |
さやか | いえ……ありがとうございました! |
綴理 | さや。 |
さやか | あ、先輩? 3 |
綴理 | そろそろ休憩。さやも、どうかな。 |