第3話『雨と、風と、太陽と』
PART 5
花帆 | ここが……スクールアイドルクラブの……? |
花帆 | あの、案内してくださって、ありがとうございまーー。 |
花帆 | い、いない……!? まさか本当に、大倉庫の妖精……!? |
花帆 | そんなわけ……あ。 |
花帆 | え、これって……。 |
梢 | それは『ラブライブ!』で優勝したときの写真よ。 |
梢 | 蓮ノ空の先輩たちが、スクールアイドルの頂点に立った。 その瞬間を写したものね。 |
花帆 | 梢センパイ……。 |
梢 | 綴理から聞いたわ。あなたがここに向かったかもしれないって。 それにしても、よくひとりでたどり着けたわね。 |
花帆 | あ、それは、案内してくれた人がいて……。 |
梢 | そのノートは。 |
花帆 | えっ、あっ、すみません。 部室にあったのを、持ってきちゃって……。 |
梢 | 少し恥ずかしいけれど…… いいのよ、これはスクールアイドルクラブみんなのものなんだから。 |
梢 | 迷ったり、考えを整理したくなったときにね、ノートを広げるの。 このノートに触れていると、なんだか安心して。 |
花帆 | 安心……? |
梢 | どうすればもっと、うまくできるのかな、って悩んでいるときでもね。 |
梢 | 私が憧れたスクールアイドルの先輩方も、こんな風に毎日悩んで、 がんばっていたんだ、ってわかるから。 |
花帆 | ……梢センパイでも、 そんな風に、悩むことがあるんですか? |
梢 | いっつもよ。 |
梢 | だから背筋を伸ばして、後輩の前ではせめて格好つけようって、 前を向いているの。 |
梢 | 私が先輩からしてもらったことを、 今度はちゃんと後輩にお返しできるように。 |
梢 | 未来の新入生に、憧れだって、そう言ってもらえるように。 |
花帆 | ……。あの、あたし……ノート、ちょっと読みました。 |
花帆 | たくさんの弱音だったり、お互い励まし合っていたりして…… あたしもなんだか、胸に響きました。 |
花帆 | センパイ。あたし、センパイがせっかく作ってくれたメニューをはみ出して、 無茶していました。 |
花帆 | だから! あたしのこと、ちゃんと叱ってください! |
梢 | 日野下さん……? |
花帆 | だって、センパイはあたしのこと、信じてくれていたのに……。 |
花帆 | あたしが勝手に練習していたのは、 センパイの言葉を信じられなかったってことですもん! |
花帆 | そんなの、だめじゃないですか! |
花帆 | だから、梢センパイ。 あたし、これからもセンパイと一緒にユニットを続けていきたいですから。 |
花帆 | ここでちゃんと、叱ってください! |
梢 | ……そうね。 |
梢 | わかったわ、日野下さん。あなたがしたのは、よくないことよ。 あなたが怪我をしたら、私が悲しいわ。次からは、もうしないで。 |
花帆 | ……はい。 |
梢 | それじゃあ、次は私の番。 私も、あなたに叱ってもらわなくっちゃ。 |
花帆 | え? |
梢 | ライブの日取りを、強引に決めてしまったでしょう。 そのせいで、あなたは無茶をしてしまった。 |
梢 | もっとあなたの不安と向き合って、 ふたりでしっかりと話し合うべきだったわ。 |
花帆 | それは、でも、叱られるようなことじゃ。 |
梢 | あなたが誤ってしまったように、 私も完璧な先輩ではなかった。 |
梢 | どうかしら。だから、お互いにこれから…… 手を取り合って、一緒に歩いて行くというのは。 |
花帆 | あ……。 |
梢 | ねえ、日野下さん。 もし、あなたが良ければ、なのだけれど。 |
梢 | 私は不器用で、思い込みが激しく、融通の利かない先輩かもしれないけれど……改めて、私と一緒にスクールアイドルをしてもらえないかしら。 |
梢 | 私とあなたで、この衣装を着て。 |
花帆 | でも……あたしに、その衣装を着る資格は……。 |
梢 | お願い、花帆さん。 |
梢 | 私ともう一度、ユニットを組んで。 |
梢 | がんばるあなたの、その隣に立っていたいの。 |
花帆 | そんなの、あたしこそ! |
花帆 | 朝練だってこないだ始めたばっかりで、体力もなくて、 歌もダンスもまだまだですけど! |
花帆 | でも、センパイとこれからもスクールアイドルしたいです! |
梢 | わ。 |
花帆 | 梢センパイ! あたし、がんばればひとりでも花咲けるって思っていました。 |
花帆 | でも、今はスクールアイドルとして、梢センパイと一緒に花咲きたいんです。 センパイ、どうかお願いします! |
花帆 | あたしと一緒に、スクールアイドルしてください! |
梢 | 花帆さん。 |
梢 | ……ええ、もちろん。 そして、ありがとう。 |
花帆 | センパイ……! |
梢 | 私とあなたで、ステージに、満開の花を咲かせましょう。 |
花帆 | はい! |
花帆 | センパイ、足、大丈夫ですか……? |
梢 | これぐらいじゃ、なんともないわ。 |
花帆 | ほんとですか……? |
梢 | 数日はしっかり休みなさいって言われちゃったけれどね。 でもそれぐらいなら、練習してすぐに取り戻せるもの。 |
花帆 | それは、ほんとによかったです。 |
花帆 | そういえば、きれいな人がお見舞いに来ていましたね! 同級生の方ですか? |
梢 | ……ええ、そうよ。 |
梢 | でも、また新しいイベントに申し込まなければならないわね。 日程を取り直さなきゃ。あんなに練習をしたんだから。 |
花帆 | それは、もう大丈夫です。 |
梢 | そうなの? |
花帆 | はい。今は、おっきなライブじゃなくても、とにかくライブがしたいです。 梢センパイと、みんなの思い出に残るような、いいライブが! |
梢 | ……そう。一緒に素敵なライブをしましょう、花帆さん。 |
花帆 | はい、梢センパイ! |
さやか | こんなにたくさんの方々が……! |
綴理 | かほのライブ、みんな待ってたんだね。 |
さやか | 毎日、あんなにがんばっていましたもんね! |
花帆 | 初めまして、皆さん! |
梢 | 私たちは、蓮ノ空に受け継がれてきたユニット。 |
花帆&梢 | 『スリーズブーケ』です! |
梢 | みなさん、きょうは来てくれて、ありがとうございます。 楽しんでいってもらえたら、幸いです。 |
花帆 | まだ芽生えたばかりの、つぼみみたいな、あたしたち、ですけど。 |
花帆 | きっと退屈させずに、これからずっと、ずーーっと、 楽しませてみせますから! |
花帆 | あたしたちが、いつか立派に花咲くまでーー。 あたしたちの、雨と、風と、太陽になってくださいー! |
さやか | すごいです、花帆さん! 新人スクールアイドルなのに、4月の月間MVPですよ! |
花帆 | えへへへへ……。 いやー、照れちゃうよねえ。 |
さやか | だって、本当に素敵なライブでしたから! ねえ、夕霧先輩! |
綴理 | あ、うん……。そうだねえ……。 |
梢 | ほんとうに、よくがんばったわね、花帆さん! あなたのがんばりが認められて、私も嬉しいわ! |
花帆 | わわっ、梢センパイ!えへへー!そうなんですよー! |
梢 | ところで。 |
梢 | きょうの朝練は、どうして来なかったのかしら? |
花帆 | え゛!? |
花帆 | い、いやあ、最高のライブができたし、みんな喜んでくれましたので、 しばらくはたっぷり寝てもいいかなあ、って……。 |
梢 | そう、なるほどね。 |
花帆 | えーへーへー…………。 |
梢 | でも、最高のライブができたのなら、次はそれを上回るライブをしなければ、 ならないわね。 |
花帆 | そ、そんな! どこまでもハードルがあがっていくんですか!? |
梢 | そうよ。応援してくれる人を、 これからもずっと楽しませてみせるって言ったのは、花帆さんでしょう? |
梢 | というわけで、放課後の練習メニューは、 朝練の分もきっちりと足しておくわ。 |
花帆 | ええええええ!? そ、それはオーバーワークじゃないですかぁ!? |
花帆 | ちゃんと休むようにって、 梢センパイも言ってましたよね!?ねえ!? |
梢 | そうね、一週間前だったら、そうだったかもしれないわ。 でもあなたも、体力がついてきたみたいだから、これぐらいは大丈夫。 |
梢 | ああ、だったら明日からはもう少しメニューを増やしても……。 |
花帆 | あたし、厳しくしてくださいとは言いましたけど、 ちょっとやりすぎかなーって! |
花帆 | 助けて、綴理センパイ!さやかちゃん! ってーーなんで、さやかちゃん録ってるの!? |
さやか | 日野下花帆さんは、きょうもスクールアイドル活動、がんばっていますので、 どうぞ皆さん、応援よろしくお願いしますね。 |
花帆 | やだ~~~~!!! 楽しいことだけしていたいよ~~~!!! |